<1次リーグ:ブラジル4-1日本>◇22日◇F組

「二点差以上の勝利」を想定していた多くの人たちにとってはショックな結果でしょう。終了直後の「のみのもんた番組」ではそんなリアクションでした。
 でも僕は正直、こんなものかな、と。たぶん一点は取らせてくれると思っていました。その一点が玉田というのは意外でしたけど。あるいは玉田を使い続けてきたジーコの面子を立てるためにも「玉田ゾーン(左からのドリブルシュート)は開けてくれ」とブラジルに示唆があったのかも。ま、そこまでは考え過ぎとしても・・・

 たまたま試合前に海外の新聞をネットで見て思ったのだけど、やはり今回の日本代表は「ジーコのチーム」なのですね。ヒデや高原の名前も出ては来るけど、何よりもジーコ。本当にジーコというのは、ペレやマラドーナ並みに世界で知られた選手のようです。ブラジル代表たちとしても「ジーコのチーム」に遠慮はあったようで、前半はアイドリング状態。カカがシュートエリアでフリーになっても打たないし。「君たち、今のスペース、一点ものだよ、ふふ」みたいな感じでさらりと横バスです。
 
 今度のW杯では三試合ともそうなのだけど、前半は日本はがんばっているように見えます。一生懸命走れば、見ためにはそうなります。しかしそのツケは必ず後半にきてしまう。いくら気力を振り絞っても、筋肉の反応は鈍くなり、ミスパスが増え、ダッシュしても追いつけない。ボールを奪っても、ミスで攻撃が組み立てられないと、守備にますます負担がかかる。自分たちのミスによって、ますます消耗していく、という悪循環。

 おそらく多くの人はW杯を見て「やはり世界と日本では体力が違うな」と感じたと思うけど、実際に海外で活躍している中村や高原が体力で不利なプレイを強いられているとは聞いたことがありません。そもそもサッカー選手の持久力はプロならばそんなには違わないと思う。要は体力の使い方の問題なのです。それが今回の日本代表を見ていると全くダメだった。90分間をちゃんと計画的に戦えない。加茂監督時代の、無駄にプレスして消耗しきって自滅するサッカーに戻ったかのよう。
 日本はもう、そういう幼稚なサッカーからは卒業していたはずなんです。足で走るのでなくボールを走らすとか、疲労したらバックラインで球を回して立て直しを計るとか、むやみに前線からボールを追わず、奪いにいく位置をあらかじめ申し合わせておくとか、ここぞと思ったらあえて全員で攻撃に行く時間帯も持つとか。そういう現場での方向転換は、監督ではなくフィールドのリーダーが指揮を執るわけだけど・・・
 
 チームのバラバラ感。
 その危うさについて、朝日新聞にボンからのレポートとして書いてあったけど、結局はそれにつきるなというのが僕の感想です。ジーコが悪いとは思いません。自由を大切にするジーコ監督の下だからこそ、充実した連帯感を感じられたこともあったと思うから。
 おそらく今回の日本代表には、三人のリーダーがいたのだと思います。監督が「おまえでいく」と攻撃を託した中村、メディアが注目して勝手にリーダー扱いにしたヒデ、チームの中で実は本当にリーダーとしての技術と人望のある小野伸二。このまとまりのなさが、試合の結果として現れてしまったのだと思います。選手たちが一様に「悔しい」と口にするのは、負けたからということ以上に、実力を出し切れなかった、という現実があるからでしょう。
 
 試合後、ヒデがグラウンドで横たわり、涙をタオルで隠すシーンが映されました。印象深いシーンではあったけれど、彼が仲間を無視してそこに寝そべり続けたのは、おそらくTVインタビューを拒否するため。気持ちは尊重したいけれど、ここで何も言わないのなら、最初から黙っているべきでした。
 日本代表としてのW杯の終わりに、一人でグラウンドに寝そべるヒデ。そこに誰も仲間の選手が声をかけにいかず、スタッフのみがフォローに向かう状況。
 今回のチームは、残念ながらそういうチームだったのでした。そういうチームでは、どんなに技術があっても、どんなに気合いを入れてがんばっても、よい結果はついてこない。
 これもサッカーの奥深さなのだなと、改めて考えさせられるW杯となりました。
 

<1次リーグ:オランダ2-1コートジボワール>◇16日◇C組◇

 すさまじい試合でした。1次リーグも二巡目に入り、すでに決勝トーナメント進出脱落が決まり始めていますから、一試合目で負けたコートジボワールは必死でした。二敗したら早くも敗退確実。

 この試合の前に行われたアルゼンチン−セルビアモンテネグロ戦でも、初戦で負けたセルビアモンテネグロはすべてをかけて戦った・・・のですが、早い時間にアルゼンチンに得点を許し、勝つしかないと攻めに行ったら、失点、失点、失点、失点、失点・・・と6点も取られて撃沈。

 なんだかそれを見て、次の日本もああなるのでは・・・という悪い予感が。勝ちを意識しすぎて、無得点、あるいは失点状態でムキになって攻め続けると、後半に体力を失い、再び悪夢の大量失点がまっているかもしれないのです。特に初戦でブラジルに負けているクロアチアは、得失点差も意識するはず。日本には焦らずに自分たちのサッカーし続ける「粘り」を大切にしてもらいたいっす。特に相手が短気な性格といわれるクロアチアとなればなおさら。前半を1失点以内で乗り切って、後半勝負。守りに入ったクロアチアに突っかかっていき、当たり負けしてもファールをもらう。そして日本自慢の精度高いフリーキックで形勢逆転!!

 と、話がそれましたが、コートジボワールって強いの??? みたいに何も知らなかったアタシが悪かったです、ゆるしてください。イングランドリーグで優勝したチェルシーのFWグロドバだけ、かと思ったら、センターバックの二人だって、堅守でチャンピオンズリーグ決勝まで進んだアーセナルのセンターバックコンビだったのですね。それだけでなく、他の選手もみな素晴らしかった。強くて、速くて、正確で。確かにこれならカメルーンを破ってアフリカ代表になれたのもうなずける。おそらく今回のアフリカチームとしては最強なのでしょう。

 でも、せっかくの強いコートジボワールも、入ったC組が悪すぎました。いきなりアルゼンチンとオランダ相手では。
 結局、今回も先にオランダがフリーキックなどで2ゴール、コートジボワールが必死で追いかけたけど1点どまり。2−1の惜敗はアルゼンチン戦と同じ得点結果なのでした。
 
 それにしてもこの試合、すごいスピードとスピードの激突でした。初戦でセルビアモンテネグロをきりきり舞させたオランダのロッペン相手でも、コートジボワールの選手たちは全く走り負けなかったし。こんな素晴らしいチームが早々と1次リーグ敗退はもったいなさ過ぎる、と、最後は僕もコートジボワールを応援しました。せめて1点取って引き分ければ、コートジボワールもオランダも一勝一引き分けで並ぶし、最終戦の相手を考えると、むしろコートジボワールが有利になる・・・
 と思ったけど、やっぱだめでした。ロスタイム最後のフリーキックは、攻め上がった全員の頭を通り越し、ゴールポストも越えてフィールドの外へ。奇跡は起きませんでした。厳しい現実。しかしこれもまたW杯です。
 

<1次リーグ:スペイン4-0ウクライナ>◇14日◇H組◇

 ウクライナという国について、僕はよく知りませんでした。唯一知っていたのは、今回の欧州予選で最初にW杯出場を決めたシェフチェンコのチームということ。
 しかしそれだけではW杯を見る意味がありませんよね。で、ウクライナについて調べてみました。ソビエトから分離した小国、というイメージがあったけど、実際は人口4700人、イタリアより少し少ない程度の立派な大国なのでした。
 黒海の北部平原地底に国土が広がり、首都のキエフはともかくとして、他に誰でも知ってる地名が、『ガンダム』のオデッサ作戦で有名なオデッサ。・・・そう、サイド7から地球に戻ってきたホワイトベースが正規軍扱いで巻き込まれた一大作戦。そしてもう一つ有名なのがチェルノブイリ、あの原発事故はウクライナ北端で1986年4月26日に起きたことなのでした。
 それだけ立派な国でしたら、欧州予選無敗通過の強さもうなずける。ACミランのエースストライカー、シェフチェンコ率いるウクライナは、今回W杯の台風の目か? と恐れと期待を抱いていた自分であります。

 しかし結果はごらんの通り惨敗。逆に欧州予選で得点力不足で悩んでいたスペインが、サクサクと加点して最高の立ち上がりとなってしまいました。

 先にセットプレー(コーナーキックとフリーキック)で2点取って入ってしまったのが大きかった。本当はスペインはイタリアと違って守りにはいることを知らない国で、W杯でも点の取り合いの壮絶な試合を演じることが多くて、ウクライナも2点ぐらいで落ち込む必要はなかったはずだなんけど、スペインの速攻をファールで防いで退場者を出してしまっては、万事休す。お疲れさまっした!! ま、ここで負けてもH組の他国はチェニジアとサウジアラビア、まだまだウクライナの一次突破は可能性大ですからね、どんまい。 

 戦前の情報からすると、期待はウクライナだったのだけど、逆に今回のスペインの強さに驚かされてしまった。スペインは毎回強い選手の集合体なのだけど、守りをおろそかにするイケイケお祭りサッカーなものだから、結果的にあまりいい成績は残せていません。しかしこれは「なんとなくダラダラと守りをさぼっている」ということではなく、おそらくスペイン代表のアイデンティティなのです。つまり反イタリアなのです。カテナチオ(かんぬき)なんて姑息なことは、絶対にしないのです。スペイン代表にセリエAで活躍する選手は一人もいません。イタリアなんかあっかんべー、なのです。
 そんな個性派スペインですが、今回の代表にはアーセナルなどイングランドで活躍している選手が4人います。バルセロナで欧州チャンピオンズリーグを征した選手たちもいます。勝つことを知り、勝つために何をすべきかを知っている冷静な選手たちが、チームリーダーになっているのです。
 僕的にはノーマークだったけど、今回のスペインは要注目かも。
 順当に進めば7/2の準決勝で、スペインvsブラジルの激突です!! ・・・ああ、やっぱりスペインは今回もベスト8どまりか・・・

<1次リーグ:韓国2-1トーゴ>◇13日◇G組◇

 自分は個人的人生の都合で90年イタリア大会は全く見ていないので、ヨーロッパで行われるW杯は初めての経験です。地球の裏側?とか心配していたけど、毎日夜の10時に試合が見れるというのは悪くないっすね。

 しかし見たのは南米・アジア・欧州・アフリカのチームばかり。南米チームはパラグアイだけ? なんだか南米チームを見ていないヘンなワールドカップ・・・と思っていたら、たぶんテレビの放映時間の都合で、南米チームは日本時間午前4時からの試合が多いみたいです。アルゼンチンもブラジルも第一戦は4時。さすがにこの時間まで見続けるのは無理なので仕方がないけど。
 
 さて、今日の第一戦は韓国戦でした。僕も連日2試合ペースでサッカーばっかり見ててちょっと飽きてきたなぁ、面白くなかったら見るのやめちゃおうかな、なんて不謹慎なことも思いつつ、前半のトーゴのフィジカルのすごさにたじたじの韓国を見ていると、やっぱりアジアは弱いのかなぁ・・・などとさらに不謹慎な感想を持ってしまったり。
 しかし!! 前半をなんとか一失点で乗り切った韓国の、後半が素晴らしすぎて画面に釘付けでした。前半はチャンスらしいチャンスはなかったけど、攻撃的突進はしていて、相手にイエローカードはもらわせていたのです。地味な積み重ね。だけど、これが大正解。後半に入って早々、DFラインから飛び出したパクチソンを捕まえようと足を出したトーゴのセンターバックが二枚目のイエローで退場。数で有利になった韓国、そして暑い気温が選手の体力を奪っていき、試合は韓国に傾きます。まずは高速キムチフリーキックで同点に追いつき、ほどなくアンジョンファンの強力ヤキニクミドルシュートがゴールを揺らす。リードした後の15分は、攻め急がずにひたすら自陣でボールを回し、すでに体力のほとんどを使い果たしたトーゴをあざ笑うかのように、余裕で勝ち点3をゲット。前回ベスト4の貫禄をアフリカ新興国相手にまざまざと見せつけた韓国なのでした。

 ああ、この日本との違いはなんなのだろう。日本も先制して80分まではリードしていたのですよね。しかしその残り10分のときに疲れ切っていたのは、追いかけるオーストラリアでなく、逃げる立場の日本でした。これは明らかにペース配分の失敗。メディアではジーコ監督の交代戦術が揶揄されているけれど、W杯本選で交代できるのは3人だけ。坪井のようなアクシデントを考慮すれば多くは期待できない。やはりフィールドプレーヤーが自己管理するのが基本なのです。

 中田英は「カウンターで取るべきときに点を取らないからこうなった」とコメントしているけど、僕は明らかに違うと思う。リードしたら、追加点よりも、体力を大切にするべきだった。「ボールを奪ったら素早くカウンター」を執拗に繰り返していれば、FWは体力を急速に失うし、前線でボールキープできなければ、すぐに相手の攻撃が始まる。守備スタッフも休むヒマがない。
 リードしているときは体力温存を優先し、万が一、守りきれずに同点にされてしまったとき、そのときこそ全力の逆襲をする。それがW杯の戦い方なのです。べつにこれは僕が主張しなくても、短い期間に勝ちを重ねる必要のあるW杯では、常識的な戦術のはず。国際経験豊富な今の選手たちならわかっていて当然のはず。
 
 勝ち負け以上に残念な気がします。日本はアジアチャンピオンらしい本来のパスサッカーを全くやれず、むしろ普通の親善試合よりも悪いパフォーマンスで第一戦に3失点完敗。一方、韓国はアフリカチームのフィジカルにおされながらも、焦らずに自分たちらしいサッカーを大舞台できっちりとやり、最後は余裕を持って勝ち点3をゲット。
 
 ペース配分、自分たちらしさを活かすこと、正直になること・・・
 インテリジェンスなく、がむしゃらに「必勝」を叫ぶだけでは、決して門戸が開かれることはないサッカーの奥深さをあらためて実感させられました。
  

<1次リーグ:オーストラリア3-1日本>◇12日◇F組◇

 日本としては痛すぎる一敗。
 いろいろ要因はあります。GK川口が無謀に前に跳びこんでいってゴールをがら空きにしたとか。(中沢がついているところへなんでわざわざいくのか) カウンターの決定期を決められなかったこととか。右サイドの駒野のクロスが一つもゴール前の選手にあわず、あさっての方に飛ばしてばっかりだったとか。中田英からのパスは通りが悪く日本らしいパスサッカーが全くできていなかったとか。決定的な柳沢のフリーシュートは、ゴールキーパーへの柔らかいパスのよう。
 ・・・
 アラを探せばいろいろあるけれど、本当の敗因は、やはりヒディング監督にやられた、ということなのではないでしょうか。ビドゥカとキューウェルというFW要注意人物を日本は徹底マークして押さえ込みました。それはヒディング監督としては計算のうちだったのかも。気温の上がった試合で、二人の要注意人物をマークすることで日本の守備は疲れてくる。そこをねらいすまして、後半なかば過ぎに攻撃的MFケーヒル(エバートン/イングランド)を投入。この選手が実はすごかった!! スピードあり、決定力あり、ミドルもポスト直撃で決めてしまう。日本は守備スタッフもベンチも対応できないままに、立て続けに三失点・・・
 
 中田英は試合前に「走らないとサッカーにならない」と走ることを主張していたけれど、なにかと攻め急いでパスがつながらず、無駄に体力を消耗して自滅した、という現実はどうよ。
 かつての加茂監督のプレスサッカーを思い出してしまった。「日本人の体格差を数でカバーする」と、たしかに90分間プレスをかけ続けられればいいけど、後半に体力を使い果たして惨敗するというのが毎度のパターン。走ることも大切だけれど、90分間走り続けるのは誰だって無理。ペース配分を考えて試合を組み立てるのが、国際経験豊富な今の世代だったはず・・・

 オーストラリアは、心配していたほど優れたチームではありませんでした。体はでかく、体力はあるけれど、ロングパスやクロスの精度はお世辞にもいいとはいえない。ふらふらとゴール前にほおりこんできたって、そこは日本もきっちり対応できてました。ラッキーな先取点を得た日本としては、十分勝てる試合だったはず。しかし終わってみれば3-1の完敗。

 僕が言っても仕方がないけれど、前がかりにいきたがる中田英や川口ではなく、冷静にパスサッカーする小野・楢橋を中心に据えて、新生日本を次の試合では見てみたいです。
 そして加地の代役は駒野には無理。残念ながらクロスも守備も悪すぎました。日本サッカーのレベルはこんなものではないはず。だったら小笠原に右サイドをまかせた方がはるかにいいでしょう。
 
 さあ、三失点という結果を受けとめて、ジーコにはもう一度チームを作り直して欲しい。直前になって「走らないとサッカーにならない」とペースを乱す選手ではなく、タレント豊富な日本の中盤らしい本来のパスサッカーをめざして。

<1次リーグ:メキシコ3-1イラン>◇11日◇D組◇

 いろんな意味で素晴らしい一戦!! いろんな意味でこれぞワールドカップでした!!

 もちろん、試合も素晴らしかった。メキシコはFIFAランク4位で、今回のワールドカップでは欧州・南米以外で唯一シード国となった現代の強豪です。メキシコといえば、日本も先のコンフィデレーションカップで格の違いを見せつけられてしまった相手。しかしとりあえず高さはあまりないチームということで、上背のあるイランは前半はいい勝負してました。お互いセットプレーで一点ずつ取り、拮抗したまま後半へ。

 ところが後半の半ばを過ぎると徐々にイランのディフェンスの疲れが見えてきちゃいました。1-1で逃げ切れれば御の字のイランだったのですが、高さはなくても走り続けるメキシコの実直なプレイにだんだんとついていけなくなり、後半30分にDFの連携ミスをつかれて失点、その三分後には綺麗なクロス・ヘディングで三点目。ジ・エンド。
 後半30分という『勝負所』にきっちりとだめ押しまでしてしまう、あらためてメキシコのしたたかな強さを再認識させられました。

 ・・・というのはゲームの話、確かにワールドカップらしい好ゲームだったのです。会場の7割はシード国・メキシコサポーターのようでしたが、イランだってドイツとは縁が深く、ハンブルガーSVのマハダビキアや、バイエルンミュンヘンのカミリなど、ブンデスリーグ出活躍する選手も多いのです。会場だって大盛り上がりでした。

 しかし!! アタシはこの試合のMVPはテレビ朝日に差し上げたひと思います。まことに素晴らしい中継でした。
 実はサッカー中継といえばかつてはテレビ東京だったのです。低俗な娯楽番組の多いテレ東ですが、サッカーだけは伝統的にインテリジェンス溢れる素晴らしい中継をしていました。サッカー不遇の80年代にもヨーロッパサッカーを伝え続けてきた唯一の放送局ですし、逆にいえばテレ東のマイナーさと、日本におけるサッカーのマイナーさは、共通していたともいえます。日本が始めてワールドカップ出場を決めた、いわゆる『ジョホールバルの歓喜』も、低予算がために、既に結果は出て消化試合なっているかもしれない最終戦を確保したテレ東が伝え、どどんと驚異の視聴率を記録し、その充実した中継・解説と岡野の破天荒なプレイと共に、深く喜びをかみしめたのも思い出されるところです。
 しかし時代は移り、サッカーも野球に勝るとも劣らないメジャースポーツになってきました。思えば『プロ野球ニュース』という長寿番組がありましたが、それはプロ野球メインでありながら他のスポーツも含むというスポーツ番組だったのですが、いまや『スーパーサッカー』というサッカーメインの番組が、他のスポーツ(プロ野球など)も含んで報道するという逆転現象!?
 そうなってしまうと、テレ東には話がでかすぎるのかも。テレ東のサッカースタッフはスカパーやテレ朝に引き抜かれてしまったようです。そうなったとき、やはりテレ朝のサッカー中継は本物となる。

 例えば今回の実況の田畑氏の伝えた内容の充実ぶりは目を見張ります 。

 強豪のメキシコが勝って涙している。それには理由があった。ゴールキーパーのサンチェスのお父さんが6/7に亡くなった、母国に帰り出場は無理かと思われていたが、ぎりぎりでドイツ入りし、選手全員が彼の父に勝利を捧げるべく戦った・・・

 この試合を仕切ったのはイタリアの審判団だったのですが、主審のロゼッタ氏は、あのコンフィデレーションカップでメキシコがブラジルを1-0で破った試合もジャッジしていた審判・・・

 もうほとんどサッカーのトリビアの泉。すべての選手の名前と背番号をきっちり予習し、その背景まですらすらと多彩に語る実況者と、ズケズケと事実をありのままに語るセルジオ越後。そしてセルジオ越後の影にこの人あり(フォロー担当)の川添氏。
 ひたすらノリで実況してしまう絶叫アナや、選手の名前も背景も予習していない無知丸出しの解説者、あるいは分かり切ったことをひたすらほめて当たり障りなく仕事をこなそうとする解説者など、他局ではまだまだいただけない低レベルなサッカー中継が多い中で、テレ朝のこの充実ぶりは本当に◎。まさにサッカー中継のMVP。この充実した放送にこそ『巧』です!!

 ついでにもう一つ報道に関して。僕は今回は文章書くつもりで試合を見ていて、終了後すぐにパソコンに向かったのだけど、ネットを見てみると、既にたった今終わった試合の内容が写真付きで子細に報道されていた!? うそー、だってまだ5分もたってないっすよ。すっごいっすねー。僕が主に頼りにしているのは日刊スポーツと朝日新聞のサイトなんだけど、まあこの気合いの入れようには頭が下がります。サッカーバカ、ワールドカップバカ、まだまだすごい人たちがいるんですね。

<1次リーグ:トリニダード・トバゴ0-0スウェーデン>◇10日◇B組

 スウェーデンというと国民人工が埼玉県ぐらいで、いわば埼玉選抜がワールドカップに出ているようなもの、というのは前回のワールドカップのときに僕が書いたことなのだけど、トリニダード・トバゴという国は人口13万人、川崎市と同じくらいなのだそうだ。その小国が初出場のワールドカップでちゃっかり勝ち点1を得てしまった、恐るべし。

 トリニダード・トバゴにはヨークという、マンチェスターユナイテッドで活躍した選手がいるのでした。新興チェルシーが台頭する以前の、マンUの黄金期にフォワードで大活躍しタイトル獲得に貢献した・・・と言われれば確かにそんな選手がいました。あの最強マンU!! どのくらい強かったかって、たしかイングランドリーグで一年間一度も負けなかった、みたいな。引き分けはかなりあったけど、ほとんど無敗優勝という、アンビリバボーなぶっちぎりシーズンがありました。それを支えた一人がヨークだったのです。
 そんな名選手も今では既に35を過ぎ、点取り屋は引退気味、トリニダード・トバゴのナショナルチームではボランチとしてチームをまとめていました。最終ラインの少し前で体を張る大男。もともと守備の人ではないけれど、技術と試合感は最高で、スウェーデンのチャンスにことごとく顔を出しつぶしていく・・・

 前半こそ互角に勝負しようという気概が感じられましたが、後半早々に退場者を出したトリニダード・トバゴは専守防衛に徹してしまった。ゴールキーパーも乗ってきて、好セーブを連発。噂のイブライモビッチの惜しいシュートが何本かあったけど、ことごとくゴールキーパーがはじき出して。こうなるとどれほど攻撃力あるチームでも点を取るのは難しくて、スウェーデンのイライラは募るばかり。

 開幕戦のドイツが、専守防衛ぎみのコスタリカからサクサクと点を重ねられたのは、実はロングシュートという飛び道具がバシッと決まったから。残念ながらスウェーデンにはそれが見られませんでした。パスをつなぎ、あるいはゴール前にロングパスをほおりこんで、噂の強力ツートップで打開、とはかるのだけど、これがことごとくはじかれてトリニダード・トバゴの思うつぼ。
 ふと振り返れば、まったく不思議なもので。これは逆であるべきなんです、ワールドカップという大舞台では。小国スウェーデンこそがゾーンディフェンスで専守防衛に徹し、少ないチャンスをカウンターでねらい、少数精鋭ラーション&イブライモビッチで点を奪っていく。

 僕はスウェーデンは好きなほうで、毎回ひいきにしたくなるチームなのだけど、今回は噂のラーション&イブライモビッチに期待しすぎて激しくイライラしちゃいました。ミドルシュートは枠に飛ばず、ゴール前をねらうクロスボールの精度の悪さも目に付きました。要するにブラジルやドイツとは選手層が違う、そんなこともしみじみ。
 でも、だからこそ、そんな普通の人たちのがんばりが美しい。スウェーデンが次に当たるのは、既に一敗したパラグアイです。あとがなく攻撃的に来る南米のチームを、伝統のカウンターサッカーで美しく粉砕していただきたい!!
 と思います。

<1次リーグ:ドイツ4-2コスタリカ>◇9日◇A組◇ミュンヘン

 やはりドイツはいいサッカーしてました。美しく状態のいい芝のグラウンドで、高速パスをスイスイとつなぎ、後ろの選手が自在に前のスペースに走り込んでいく。この組織的な攻撃を見ちゃうと、だれだってドイツファンにならざるを得ません!!

 クリンスマン監督が現役の時代もそうだったんだけど、本当に惜しみなく攻撃に人数をかけていくドイツゲルマン魂のサッカーでした。「そこにスペースある!!」と思ったら、必ず走り込んでくる選手がいる。そこに相手が対応を始めたら、くるりと振り返って、逆をねらう。そこにもちゃんと選手が走り込んでいる。なされるべきことが当然のようにサクサクとなされていくことが、見ていてストレスフリー、とっても快感です。もちろん走っている選手は楽ではないだろうし、常に攻撃の人数を優先するため、守備は二の次になりがちですけど。

 その手薄な守備を突かれて、コスタリカに2失点しました。ラインディフェンスの裏を突かれた、ほぼ同じ形での失点。どちらもオフサイドぎりぎりで、特に二失点目はスローで見ると明らかにオフサイドのようだったけど、判断するのは審判なのでこういう誤差はありです。文句を言ってもはじまりません。
 ラインディフェンスのリスクの大きさ、あらためて感じてしまった。かつてトルシエジャパンがそういう守備だったんですよね。最終ラインを高く一列に保ち、相手の攻撃をオフサイドにして防ごう、という。最終ラインを簡略化する分、中盤に人数を多くて。しかしトルシエジャパンでは、裏を突いてくる決定的なパスを防ぐために、中盤の底の選手は必ずボールによせねばならなかった。身体を寄せれば、抜かれやすくもなり、そこをまた別の選手が寄せていく。気の抜くヒマのないボランチにすごく負担がかかり、走れるタフなボランチとして戸田らが代表に招集されたために、中村俊介選手が外されてしまったのは有名な話。

 このドイツの守備のもろさは克服されていくのでしょうか。なんとなくこのままいっちゃうんじゃないかな、という気もします。ラインディフェンスのミスをなくするためには、オフサイドねらいを捨ててスィーパー(掃除人の意・最終ラインの裏にもう一人いる守備選手)を配するのが手堅いと思うし、ドイツはそれが得意なパターンだったはず。しかしいまからシステム変更することはないでしょうから・・・

 ドイツの一次リーグ突破は見えてきたし、手堅いといえるでしょう。しかし決勝トーナメントに進むと、最初に当たるのはイングランドかスゥェーデンが濃厚。リスクの高い攻撃サッカーをとり続けたら、勝つことは難しいと思う。必ず何らかの対応が必要です。がんば!!

2006年ドイツW杯